2014年4月2日水曜日

〈e-Sports SQUARE AKIHABARA〉2回目の〈HS〉イベント開催―世界トップクラスのプレイヤーも来場!

 第1回からちょうど2週間後の3月19日、〈e-Sports SQUARE AKIHABARA〉(e-SQU)で第2回の〈Hearthstone〉(HS)のイベントが開催された。今回は何がどう変わり、またどんなプレイヤーが参加したのか?前回同様にプレイヤーとして参加した私nemukeが今回も体験レポートをお届けする。

写真:〈e-SQU〉エントランス

■世界トップクラスのプレイヤーの視点とは
 では、さっそく〈HS〉イベントの模様を、といきたいところだが、本番前に興味深い体験をすることができたので、まずそれを紹介しておこう。
 私はイベント開始時間の18時より少し早い17時ごろに到着したが、中に入ったとたん、ロッカーに荷物を預けようとしている1人のプレイヤーの姿が目に飛び込んできた。前回も会場に来ていたイタリア人のTemoさんだ。「日本には憧れて来たんですよ。最初は日本語ができなくて道を聞くのにも苦労したんですが」と語るTemoさんはすでに日本在住暦8年の36歳。今では流暢に日本語を操り、目下、フリーランスのデザイナーとして働きながら毎日5時間も〈HS〉をプレイしている。

写真:イタリア人のTemoさん

 「〈HS〉のプレイは去年の10月ぐらいから始めました。(8月の)ベータテストにも応募したんですけど、キーが送られてくるまでけっこう時間がかかったんですよね。以前、〈HS〉と背景設定が同じ〈World of Warcraft〉をプレイしていたので、〈HS〉を始めたときは『このHero知ってる!』というふうに懐かしく感じたんですが、自分でもこんなにはまるとは思いませんでしたよ」
〈HS〉にはまったのはトレーディングカードゲーム〈Magic: The Gathering〉での経験の反動もあるかもしれない。
「前に4年ぐらい〈MtG〉をプレイしていて、夜の大会にもよく参加していました。ところが、新しい拡張セットの発売でカードの種類が増えてくると、(カードを把握しきれなくなって)ついていけなくなってしまったんですよ」
 こう苦笑するTemoさんだが、実は〈HS〉のラダー最高ランク”Legendary”に到達した凄腕の〈HS〉プレイヤーなのだ。実際に、Blizzardが3月13日に発表したEUのLegendaryプレイヤーランキングでもTemoさんの名前が25位に載っていた。つまり、その実力は全ヨーロッパプレイヤー中トップ30位内に入っているのである。Legendaryランクのプレイぶりとはどのようなものなのだろうか? それを知りたくて、私はTemoさんの隣の席に座り、じっくりと話を聞いてみることにした。「アリーナは運要素が強いので、主に構築戦をプレイしています。構築戦では『このカードを入れているということは、相手はControl寄りのデッキだな』とか、『〈Fire Ball〉を2枚使ったからもう次の〈Fire Ball〉はないな』というふうに、相手のデッキの方向性や次に使ってくるカードの可能性や考えて駆け引きする要素がたくさんあるんです。一方、アリーナでは特殊なカードが入っていたとしても『ピックの選択肢がほかに無かったから入れていただけ』だったり、『同一カードを何枚でもデッキに入れられる』といったことがあって、相手のデッキ構成を読みにくい。ドラフトして強いデッキを構築してプレイするまではいいんですけど、そこから先がないんですよね。構築戦とは遊び方が違うという印象です。」

写真:Temoさんのアカウント。構築戦のRankedで1992勝をマークしているものの、アリーナはわずか56勝で私nemukeの勝利数(68)よりも少なかった

 ところで、Temoさんは日々どんなウェブサイトや配信をチェックしているのだろうか? トップクラスに上り詰めるにはゲームを深く理解しなければならず、したがってウェブサイトや配信を使って情報を集めなければいけないはずだ。そこでTemoさんに好きなサイトや配信プレイヤーを聞いてみた。「ウェブサイトではLiquid Hearthの戦術の記事や、Battle.netのForumをチェックしています。配信をチェックすることも多いですよ。ぼくが好きなのはGabe Wallsというプレイヤーです。彼は〈MtG〉で世界チャンピオンになったこともあるプレイヤーで、プレイ中に『こうすればこうなる』という解説をしながらやってくれるんです。そのプレイの仕方もすごくリラックスしていていいな、と思います。ぼくの場合、特にレジェンダリーに到達する直前のRank1でラダーをプレイしていたときなんか、1戦1戦で勝つか負けるかですごく緊張していましたから」

写真:当日やっていたGabe WallsのStreaming

 ちなみにTemoさんは今、WarriorのControlデッキを使っているということなので、私はそのデッキに興味を引かれ、ぜひTemoさんと対戦してみたいと思った。どんな勝負事でも強い人にボコボコにされると覚えが早いものだ。とはいえ、私の〈HS〉アカウントはNAサーバーで、TemoさんはEUサーバーである。〈HS〉では違うサーバーのアカウント同士はプレイすることができない。どうすればいいかと思案していたところ、Temoさんから「じゃあ、ぼくのデッキでRankedをやってみますか?」とありがたい提案があった。強いプレイヤーのデッキを借りてアドバイスを受けながらプレイするのは大いに勉強になる。もちろん私は快諾し、Temoさんのデッキを使って、しかもアドバイスを受けながらプレイするという貴重な機会を得たのだった。

写真:Temoさんのアカウントを貸してもらってプレイ。直にLegendプレイヤーの考えを教えてもらいながらプレイできた

 Legendaryランクのプレイヤーになるとマッチメイキングにも時間がかかる。20秒後、ようやくHunterの相手が登場。Temoさんによれば、攻撃的なHunterのデッキが最近流行っているという。Hunterは自身のHero Power〈Steady Shot〉で相手HeroのHealthを2点削れることからもわかるように、相手のHealthを削ることに特化した攻撃的なHeroだ。特に〈Unleash the Hounds〉〈Leenoy Jenkins〉〈Timber Wolf〉のコンボは強力で、これは相手の場に3体のMinionがいたとすると、Charge持ちの〈Leenoy Jenkins〉で6点、〈〈Unleash the Hounds〉で「相手の場の3体のMinionと(〈Leenoy Jenkins〉が相手の場に出した)2体のトークン」によって5体の1/1のCharge持ちBeastを出せるから5点、そして〈Timber Wolf〉で各Beastの攻撃が+1点され、合計で7マナ・16点のダメージを1ターンで叩き出せる。Hunterにとっては15点程度のHealthなど無いも同然なのだ。

写真:全体に1点ダメージを与える〈Whirl Wind〉はHunterの〈Unleash the Hounds〉に対抗できるカード

 私のゲームでも上記のコンボを警戒しながらゲームを進めることとなった。WarriorはHero Power〈Armor Up〉や〈Shield Block〉でHeroのArmor値を増やせるのがHunterには有利に作用する。また、全体に1点ダメージを与える〈Whirl Wind〉はHunterの〈Unleash the Hounds〉で出てきたBeastをまとめて潰せるカードだ。自分の場にEnrage(ダメージを受けることで攻撃力が上昇する)持ちのMinionやダメージを受けることでカードをドローする〈Acolyte of Pain〉がいたときは使いたくなったが、Temoさんに「〈Unleash the Hounds〉のために残しておかないとダメ」と抑えられてしまった。
 相手はSecretのSpellが発動することで攻撃回数が増える専用武器〈Eaglehorn Bow〉でこちらのHeroを直接攻撃してくる。HunterのSecretは攻撃されたときに発動するものが大半だ。したがってこちらがMinionを出して攻撃しようとするとSecretが発動し、〈Eaglehorn Bow〉の攻撃回数が増えてしまう。攻撃回数が増えればそれだけこちらのHealthを削られてしまい、〈Unleash the Hounds〉コンボの射程圏内に入ってしまう。だからこちらはMinionを出すだけで攻撃はできない。対するHunterも攻撃回数が増えるまでは〈Eaglehorn Bow〉を浪費するわけにはいかないから、その結果、お互いに攻撃せずにらみ合いの状況が続く。ここは待つしかないのだろうか? そう聞いてみたところ、Temoさんにはすでに勝利のイメージができているようだった。「この状況を打破できるカードが1枚あって、それが来るのを待っているんですよ」

写真:〈Harrison Jones〉は武器を持つクラスに対する強力なアンチカード。相手の武器を破壊してドローした上に自身が5/4のMinionとして場に残る

 「来た、来た、来た!」次のターンのドローを見てTemoさんが興奮を隠さずに叫んだ。そのカードは相手のHeroが装備した武器を破壊し、その耐久力分だけカードをドローする〈Harrison Jones〉だ。このカードで〈Eaglehorn Bow〉を破壊しさえすればSecretはもう怖くない。ようやくMinionによる攻撃に転じることができた。その後も予断を許さない展開が続いたのだが、最終的には相手のHunterは手札が足りなくなり、投了。勝敗はともかく、何よりもトッププレイヤーの思考を体験することができたということで大変勉強になったゲームだった。

■チーム分けスタート
 無我夢中でTemoさんのデッキの解説を聞いていたら、「今からチームを発表します!」というアナウンスが聞こえてきた。すでにイベント開始時間の18時を過ぎていて、気付けば周りはイベント参加者と思われる人たちで埋め尽くされている。今回の運営では前回の記事で私が指摘した「イベントの開始に時間がかかりすぎる」点は完全に解消されていて、矢継ぎ早にチームが発表されていく。参加者が各自名前を呼ばれるたびに立ち上がってチームメイトを探しにいくため、会場は騒がしくなった。先ほどまで隣に座っていたTemoさんももういない。自身のチームメイトをどこかで見つけたようだ。

写真:ステージの上でアナウンスするスタッフのSasaさん

写真:チーム分けが始まると参加者はそのアナウンスを真剣に聞き入っていた

 すると「チーム5はnemukeさん、Alkharimさん、dosutoさんです!」と私の名前が耳に入ってきた。「自分のチームメイトは誰だろう?」。周りを窺っていると欧米人風の男性が1人、こちらに歩み寄ってくる。「普段はEUでやってるからNAのアカウントを持っていないんだけど大丈夫?」と英語でフランクに話しかけてきたのはオーストラリア人のAlkharimさんだった。あごひげを生やしていてかつ眉毛も太かったから、私は20代後半ではないかと思っていたのだが、なんとまだ18歳だという。日本のゲームイベントで外国人は目立つので、私はAlkharimさんが前回のイベントに来ていたこともよく覚えていた。
 オーストラリアや欧米の大学では高校卒業から大学が始まるまで(もしくは大学卒業から大学院への進学・企業への就職まで)に一定期間休学し、「ギャップイヤー」と呼ばれる期間を過ごすことが推奨されている。主に大学内だけでは学べないことを経験するのが目的だが、その期間をどう過ごすかは本人の自由で、アルバイトをしたり、ボランティア活動、もしくは海外生活に挑戦する人もいる。18歳のAlkharimさんもまた、ギャップイヤーで日本にやってきたというわけだ。
 Alkharimさんも強豪プレイヤーで、やはり過去にEUサーバーでRank4まで登りつめたこともある。しかしNAのアカウントを持っていないので、今回は彼が私のアカウントを借りてプレイすることになったのだが、私も初心者に毛が生えた程度だから、強力なLegendaryは何枚も持っていない。持っているとすれば〈Ysera〉と金色に輝く「15秒ドラゴン」こと〈Nozdorm〉(DisenchantするとほしいLegendaryが1枚作れる量のDustが手に入るのでいつかDisenchantしてやろうと思っている)くらいだ。こんなアカウントで大丈夫なのだろうか? と不安という私の不安をよそに、Alkharimさんは「Trumpの格安Mageデッキを使っているからLegendaryがなくても平気だよ」と言ってあっという間に自身で使うデッキを構築していったのだった。
 もう1人のチームメイトは今回初めて参加したという日本人大学生のdosutoさんで、フランクなAlkharimさんに比べると寡黙な印象だが、こちらも自身のHunterデッキを用意して準備万端の様子である。こうしてチームが揃い、共に対戦に臨むことになった。

写真:dosutoさん(手前)とAlkharimさん(奥)

■因縁の対決?前回当たったプレイヤーさんとも対戦
 イベントでは前回と同じく対戦する2チームは机をはさんで対峙し、1チーム3人のうち1人がPCの前に座ってプレイし、残る2人が後ろからプレイの助言を行うという形式だった。したがってまずはチーム内でPCの前でプレイする順番を決めなければならない。話し合いの結果、我々のチームでプレイする順番は「最初にdosutoさん、次にAlkharimさん、最後にNemuke」というふうに決まった。

写真:机をはさんで向こう側が対戦相手の6番チーム

 我々のチームが最初に対戦したのは6番のチームだった。最初の相手はMurloc Warlockを使う外国人のプレイヤー。対するこちらはHunterデッキを使うdosutoさんで迎え撃つ。
 また、我々のチームで最も熟達しているAlkharimさんが軍師のような役割を担うことになったが、Alkharimさんは日本語が得意ではない様子だったので基本的に英語でコミュニケーションを取ることになった。dosutoさんのほうは英語が苦手だったものの、〈Mana〉や〈Taunt〉といったゲーム内の単語は聴き取りやすいし、またオフラインであれば「このMinionを使ってこいつを攻撃するんだ」といった指示も画面を示せばいいから、dosutoさんが「Alkharimさんに最善の手を教えてもらう」ことについてはほとんど問題なかったと思う。そういうこともあって、最初の試合ではdosutoさんの勝利となった。
 ところでモニターの向こうには相手チームの様子が見えるので、プレイヤー達の表情から「今悩んでいるな」「Minionを大量に展開されても余裕ということは全体除去を持っているな」と推測もできる。いわばポーカーに近い心理戦も展開されるわけだが、これもオフラインイベントの楽しみと言えるのではないだろうか。

写真:dosutoさん(手前)とAlkharimさん(奥)による勝利のポーズ

 続く2戦目もAlkharimさんが危なげなく勝利し、いよいよ私の番が回ってきた。特に勝敗を競うイベントではないとはいえ、どうしてもプレイヤーは勝敗に拘ってしまうものである。それに先の2人が勝った以上、1人だけ無様に負けるわけにもいかない。そこで私が使ったのはShamanのControlデッキ。プロプレイヤーのデッキを参考にしたのではなく自分で作ったデッキだったから多少の不安はあったが、Alkharimさんが「できればLegendaryの〈Cairne Bloodhoof〉や〈Ragnaros〉がほしいところだが、今のままでも十分強いデッキだ」と言ってくれたので、自信を持って臨む姿勢ができたと言える。
Mageの特徴は任意のMinionにダメージを飛ばせるHero Powerの〈Fireblast〉によってMinion同士の殴り合いに強いほか、単体に6点のダメージを与える〈Fireball〉などのダメージSpellで相手のライフを一気に削り取れることだ。だから、私としては今回、makeinuさんが同じようにMageを使ってきた場合にはその特徴に十分注意しながら序盤にダメージをあまり貰わないような戦い方にしようと考えたのである。
 そうして対戦相手の席に目をやったところ、その顔には見覚えがあった。「あれ、前も対戦しましたよね」と声をかけてきたmakeinuさんは前回も私と対戦し、Mage対Mageの試合を繰り広げた相手だ。結局、ゲーム中最高の威力を持つSpell〈Pyroblast〉で彼は私のMageを見事に粉砕したのだった。

写真:Shaman同士の対決

 ところが、実際のゲームでは奇しくもShamanのミラーでかつ同じようなControlデッキの対決となった。Alkharimさんの的確な助言で順当にカードを使っていったのだが、場のMinionが除去されていってうまく攻撃を続けられない。そうこうしているうちに相手の場に自分のターンの終了時にカードをドローする〈Manatide Totem〉が登場。早めにSpellで除去できれば良いのだが、居座られるとどんどん手札のアドバンテージを稼がれてしまう。早く潰さなければ! と思ったものの、〈Manatide Totem〉を除去できる〈Lightning Bolt〉などのSpellがなかなか引けず、なんと合計で3枚のカードをドローされてしまった。こちらは数枚の手札をどう使うか考えあぐねているのに対し、相手側には7~8枚の手札がある……。こうなるとControlデッキの対決では絶望的だ。その後も粘ったのだが、やはり手札差には適わず、投了に追い込まれてしまった。リベンジならず!
 それにしてもmakeinuさんがShamanにクラスを切り替えていたとは……。試合後に少し話をしたところ「前回のイベントに参加したら急にモチベーションが上がって、課金してパックを買ってたくさんゲームを回したんですよ」と教えてくれたのだった。

 最初の3本勝負がすべて終わると、対戦相手のチームが換わることとなった。イベントは「3本勝負が終わるたびにチームの組み換えを行い、再び3本勝負を始める」という形式になっていたわけだ。次に我々は、なんとLegendaryプレイヤーであるTemoさんのチームとの対戦になった。Temoさんチームとの試合については割愛するが、試合後にTemoさんと一緒のチームに入ったHydileさんとputiputikun(本人曰く敬称略)という2人の日本人に、Legendaryプレイヤーとチームメイトになった感想を聞いてみると、「Temoさんが行動1つひとつの裏にある思考を全部解説してくれるんですよ。『こんなチャンス滅多にないなー』と思いながら聞き入ってました」「いやあ、むちゃくちゃ勉強になりましたね(笑)」となどととても喜んでいた。

写真:相談してデッキを練るHydileさん(左)、Putiputikun(中央)とTemoさん(右)

 ところで、因縁の対戦というのは重なるらしい。チーム戦が進む中で、前回、同じチームで色々と教えてくれたN40MATさんとも対戦することになった。正直勝てる気がしなかったのだが、「運がよければ良いゲームができるかもしれない」と思い直して、Makeinuさんとのゲームでその強さを痛感させられた〈Manatide Totem〉を入れて試合に臨む。N40MATさんのほうはWarlockのControlデッキだ。しかし試合で私は「場にMinionが何もいないときにMinionの攻撃力を上げる〈Flametongue Totem〉を出してしまう」という致命的なミスを犯してしまう。一方でN40MATさんは自身では攻撃できない代わりにステータスの高い〈Ancient Watcher〉の効果をSilenceで無効化して強力なアタッカーとしただけでなく、手札が多ければ多いほどHealthが上昇する〈Twilight Drake〉や、同じく手札が多いほど必要なマナコストが少なくなる〈Mountain Giant〉といったMinionを次々に展開していく。そうして私はあっという間に6ターンで倒されてしまったのだった。実力の差を思い知らされる形のゲームとなったが、N40MATさんは試合後に「今のはネットにアップされているデッキのコピーなんですよ」と教えてくれたばかりか、最近のWarlockデッキのトレンドについても「この前見た配信で、breekさんという日本人プレイヤーがMagic Damageを5点増やす〈Malygos〉をデッキに入れていたのが印象的でしたね。0マナの〈Soulfire〉2枚と組み合わせることで合計で18点ダメージを1ターンで与えられるというわけです」といった興味深い話を聞かせてくれたのだった。
 イベントに継続して参加すると知り合いが増えていき、そこから思わぬ形で交流も深まっていく。これもまたイベント参加の醍醐味と言えるのではないだろうか。

■女性プレイヤーも来場
 私の対戦が終わって、ふと後ろを見ると、前回同様に対戦と実況がスクリーンで行われている。また、「参加しないが様子を見に来た」というプレイヤーも何人かいて、彼らはBarでくつろいでいる様子である。

写真:前回同様に大スクリーンでは実況解説がされていた

写真:後方から見たイベント風景

 実況のメインスクリーンとは別にサブモニターでニコニコ動画のコメントもチェックすることができる。ちらりとそのコメントの流れを見てみたところ、〈HS〉をやったことがないという人がゲームのシステムについて質問し、ほかのプレイヤーが答えるという光景が現れていた。なお、大会配信の仕組みについては前回の記事にその方法を述べているのでチェックしてほしい。

写真:ニコニコ動画の様子

 ふと周りの席の様子を窺うと、1人の女性が黙々とスマートフォンでインターネットのデッキ構築例を見ながらイベントで使うデッキを構築を行っている姿が目に入った。「これですか?アリーナばっかりプレイしていたのでデッキがなかったんですよ」こう語るのは元はボードゲーム〈Dominion〉のプレイヤーだというNoaさんである。〈HS〉のようなゲームイベントに女性プレイヤーがやって来るというのは珍しい。〈HS〉を始めたきっかけなどについても聞いてみたところ、とても面白い話をしてくれたので以下にその内容を紹介したい。

写真:Rogueのデッキを構築するNoaさん

■「深夜に友人から『〈HS〉とは』という6時間の集中講義を受けたのがきっかけでした」―元ボードゲーム〈Dominion〉プレイヤー、Noaさん
……Noaさんが〈HS〉に興味を持った経緯とは?
 「私はよく友人達と定期的に集まって〈Dominion〉をプレイするんですが、その集まりに〈Dominion〉の世界チャンピオンのRさんという人がいるんです。そのRさんが最近〈HS〉を始めて、『面白いからやってみなよ』と私に教えてくれたのがきっかけです。その場では『これはTauntといって、こいつがいるとほかのMinionは彼を攻撃するしかない』『ライフ30点削ったら勝ち』といった基礎知識や『ぽんぽんカードを投げているように見えるけど、次のターン相手がDruidで〈Swipe〉で単体4点全体1点のダメージが来るから、3マナあるけどこれは出さないんだ』という具体的な理論をプレイする私の後ろに立って教えてくれたんですが……気付いたら深夜の3時を過ぎていました(笑)。こうして約6時間みっちり『〈HS〉とは』という集中講義を受けたことで『こ、これはやらないといけない』と思い、家に帰ってインストールしたというわけです(笑)」

……Noaさんは普段どのようにプレイしていますか?
 「今はものすごくはまっていますね。1日おきですけど、普段は仕事が終わった10時から3時までプレイしています。最初はPracticeでComputerと遊んでいたんですが、そうしていたらRさんに『Computerと遊ぶだけでは覚えないから対戦で殴られて来い』と言われてCasualのプレイを始めたんですが、カードがないんですよね。『こっちはBasicのカードしかないのになんでLegendary満載のハンターと当たるんだろう!?』と思いながらやってました(笑)。そこでとりあえず40パック買って、今はカードを集めるためにアリーナを回しています」

……ボードゲーム〈Dominion〉から〈HS〉へ移行したときに大変だったことは?
 「英語が一番の壁でしたね……。アリーナをやってみようかと思ったんですが、Rさんに『何も知らない状態でアリーナをやっても勝てないからまずはこれを全部読んでおけ』と資料の山をどっさり渡されたんですけど、それが8割方英語で……。彼は帰国子女だからいいんですけど、私は昔から英語が苦手だったんです。『は、はい、読みます』というしかなかったんですが……正直、人生でこんなに英語を勉強したのは〈HS〉が初めてです」

……〈HS〉には〈Starcraft2〉や〈League of Legends〉(LoL)といったいわゆるe-Sportsのゲームからやってきた人もいるわけですが、ボードゲームのコミュニティでも〈HS〉を始めるプレイヤーは多いのでしょうか?
 「結構多いですね……。(Rさんの影響もあって)私が参加している〈Dominion〉の集まりで〈HS〉がむちゃくちゃ流行ったのがきっかけなんです。その勢いが止まらずに、〈Dominion〉の集まりのメンバー達もそれぞれTwitterに『今日のアリーナ6-3だったな』といった内容を流すようになってしまいました。それを見た人たちが『なんだこのゲーム!?』と興味を持つようになり、ネット上のコミュニティにまで広まってしまったんですね」

……ボードゲームプレイヤーから見た〈HS〉の楽しさとは?
 「いかに考えてやるかが楽しいですね。たとえば「最初の手札が7マナ2枚・6マナ1枚」というように大事故を起こしていたり、相手のデッキがLegendary満載なのにこっちがBasicカードしかなくて「もうこんなの無理無理!」と思うような状態でも、プレイヤーによっては勝てたりしますから。もちろんイラっとすることもありますよ。〈HS〉にはゲーム内チャット機能はないですけど、「Hello」「Thank You」「Well Played」といった簡単なメッセージだけは飛ばせるじゃないですか。そこで負けているときに相手から「Thank You」や「Well Played」連呼されるのはちょっと頭にきますね(笑)」

……今回のイベントはどのようにして知ったのですか?
 「一緒に〈HS〉をやっていた人から情報をもらって、前回の〈HS〉のイベントのときに初めてここにきたんです。ところが情報をくれた人は急に仕事で来られなくなってしまって、結果1人で参加することになってしまいました。少し慣れてはきたんですけど、ゲームイベントに参加する女性プレイヤーって数が少ないから会場ですごく浮いてしまうんですよ。だから1人で参加するのはやはり勇気がいりましたね」

■トッププレイヤー同士の対戦
 終了時間の22時30分が近づくと、実況解説最後の一戦として会場内で最もRankの高い2名のプレイヤーによる対戦が行われることとなった。Legendaryに到達したTemoさんとRank4に到達したAlkharimさんである。しかもお互いEUサーバーのプレイヤーだから、EUサーバーで自身の最も得意とするデッキを使うことができる。
 解説には元〈Starcraft2〉World Cyber Game 日本代表選手のbreekさんが飛び入りで参加することになった。現在、breekさんは〈Killer Queen〉という日本のクランの中で仲間と共に日々〈HS〉のトッププレイヤーの配信を見てトップクラスのデッキ傾向や流れを研究しているという。
 試合のほうはControl Warriorを使うTemoさんが手札・場共にAlkharimさんのMageを圧倒する形で勝利したが、解説したbreekさんに感想を聞いてみると「TrumpのMageは今の環境ではもう辛いですね」というデッキの講評のほか、「実況の声がプレイヤーに聞こえてしまうから、お互いのプレイヤーの手札について語れなかったのが残念でしたね。今のメタについてなど言いたいことが山ほどあったんですが」と、〈HS〉への情熱を感じさせるコメントが返ってきた。
 breekさんは今回のチーム戦にこそ参加しなかったが、もし今後、真剣勝負のトーナメントが開催されれば彼のように〈HS〉をやりこんでいるプレイヤーが大勢出現するだろう。トーナメントとしての〈HS〉イベントの将来性にも大いに期待できるのではないか。

写真:スタッフのSasaさん(左)と飛び入りで解説に参加したbreek(右)さん

■イベントの課題(その1)
 ところで、〈e-SQU〉のイベント関係者の1人は「前回は予想以上の参加者に来ていただいたので、今回もやってみたわけです」という。ただし今回も前回に引き続いて水曜日の開催だった。今後も〈HS〉のイベントは平日だけなのだろうか?平日では深夜帯を中心にプレイする社会人プレイヤーは参加がとても難しくなる。「〈HS〉のイベントを平日で固定するというつもりはありません。できれば休日にやりたいのですが、スケジュールが〈Alliance of Valiant Arms〉や〈LoL〉のイベントで埋まってしまっていて、なかなか〈HS〉のイベントを入れるスペースがないんですよ。そのうち1対1のトーナメントをやってみたいと思っているんですけどね」と彼は言う。
 しかし彼によれば〈HS〉の大会運営には大きな問題があるという。「(カードゲームの性質上)どうしても課金した方が強くなってしまうじゃないですか。(カードパワーに差がつきすぎてしまって)初心者の方と上級者の方が対等の条件で楽しめないんですよね」一方、海外では初心者と上級者の格差を生めるために入手困難な「Legendaryカードを禁止した大会」も開催されている。そういった大会を開催する計画はあるのか。「もちろんあります。ただ、どのぐらいの方が参加されるのかわからないのです。とりあえずやってみるしかないでしょうね」というのが彼の返事だった。また、「〈HS〉はプレイヤー人口も多く、我々も盛り上げていきたいと思っているのですが、まだネットで日本人プレイヤー同士が集まれるコミュニティサイトができていないのが難点ですね」とも付言したのだった。

 では、LegendaryプレイヤーのTemoさんは今回のイベントをどういうふうに受け取ったのだろうか。Temoさんとは帰りの電車が途中まで一緒になったので、その間に話を聞いてみたのである。「思う存分話すことができて楽しかったですね。でも日本人の性格なのか、ぼくが単におしゃべりなだけなのかわからないんですけど、ぼくが一方的に喋っていて、ほかの2人が聞いているだけ、ということが多かったんですよ。内心『この人はうるさいなあ』と思われていなければ良いのですが(笑)。それはともかく『〈e-SQU〉がイベント用に貸し出すNAのアカウントがある』と聞いていたのに、そのアカウントの中身は「チュートリアルを進めて、2パックを開けた状態」でした。たしかに『NAのアカウント』なんだけど……そんなアカウントだったらぼくでも作れますよ。できればLegendaryカードがいくつか入ったアカウントがほしかったですね。イベントではチームで一緒になったputiputikunにNAのアカウントを借りてプレイできたものの、そこは改善してほしいですね」。やはり「サーバーが違うプレイヤー同士をどうイベントで対戦させるか」という問題は依然として残っているようだった。
 Temoさんには、どんな〈HS〉のイベントを求めているかということも訊いてみた。彼は「ぼくとしては1対1のトーナメントに参加したいですね。3対3のチーム戦もカジュアルでいいと思うんですけど、できれば1対1で競い合いたい。それもBest of 3のように一発勝負で決まらない形式がいいですね。その方が(カードの引きといった)運に左右されにくくなりますし、『負けたデッキに対して有利なクラスのデッキを使う』『同じデッキに数枚対戦相手の対策カードを入れる』というような駆け引きもできます。もし負けてしまったとしても、勝ち残った対戦相手の次の試合を見て『こういうふうにプレイするんだな』と勉強できますから、さらに高みに登れるんです。別の大会で出会う機会があれば『今度はリベンジするぞ』という風に闘志も燃やせますしね」と答えてくれたのだが、同時にそこには「もっともっとうまくなりたい」という強い向上心が感じられたのだった。

■イベントの課題(その2)
 そのほか、個人的に感じた点を、いくつか記しておきたいと思う。

 まずはイベント構成の問題だ。今回のイベント時間は18時~22時30分の4時間半。この間に休憩時間はなく、「3人1組のチーム同士の対戦が終わると、対戦チームの組み合わせを変えて次の対戦を始める」というプロセスの繰り返しだった。チームメイトと知り合ったばかりの序盤こそ新鮮味を感じるのだが、それが4時間半も続くとさすがに疲労感のほうが強くなる。また、チームで協力して対戦するというのはチームメイトの考え方に触れられるため刺激的で楽しい反面、チーム的な行動に縛られがちだ。たとえば「ちょっと疲れたから、Barに行ってゆっくりと試合を見ていたい」と思っても、「チームから1人離れるのは…」という後ろめたさに襲われる。となると結果的に「あまり楽しくないが、チームで動かないといけないから仕方なく参加している」という状態に陥ってしまう。4時間半でも飽きない人や、チームで動くことに心理的な負担を感じない人もいるだろう。もちろん感じ方は人それぞれだと思うのだが、特に初参加でイベントに慣れていない人などにはいきなり4時間半というのは負担になるのではないか。
 これにはやはり「途中に休憩時間を入れる」のが有力な打開策だろう。ある人はチーム戦で知り合った人たちとカスタムゲームを回したいかもしれないし、別の人はカフェでゆっくり話をしていたいかもしれない。そのように一度でも自由な時間を過ごせば、以後のチーム戦をするときにも再び新鮮な気持ちで臨めるはずだ。
 あるいは、イベント中のマンネリ化を防ぐという観点からは、「チームで楽しむ部」と「個人で楽しむ部」の2部構成にしてみるのはどうだろう。たとえば、「最初の2時間はチームで対戦し、30分の休憩を入れたあと、個人で参加できるトーナメントを開催する」というふうにするのである。カジュアルなチーム戦と真剣なトーナメントの2本立てにすれば、イベントにもメリハリが生まれるのではないだろうか。

 もう1つは「ネームカードホルダーの返却忘れ」の問題だ。今回のイベントでは参加者にはネームカードホルダーが渡されて、「ホルダーの中のカードに自分のIDのほか、Rankや好きなHeroを記入し、イベントの間ずっと身に着けるように」と指示された。参加者達がお互いにそのカードを見せ合えば自己紹介がしやすいというわけだ。しかしイベントは長時間に及ぶから、ゲームプレイに熱中しているとネームカードホルダーを首に提げていることを忘れてしまうものである。最後までネームカードホルダーの返却に気が付かないと、家までネームカードホルダーを持ち帰ってしまう羽目になるのだ。何を隠そう、今回の私がまさにそうだったのだ(苦笑)。(次の〈e-SQU〉訪問時に返却するつもりである)
 しかも同様の問題は〈e-SQU〉の通常営業時にも起こりうる。〈e-SQU〉では利用者に会員カードを、利用者は食事やドリンクを注文したり、時間ごとのPCの利用権を購入するときにそのカードを機械に読み取らせることになっている。つまり会員カードに記録された注文情報に基づいてレジで清算するわけだが、このカードもネームカードホルダーに入れて首から提げる方式になっている。そのため通常営業時にも利用者がネームカードホルダーの返却を忘れてしまうことが少なくないはずだ。
いずれにしてもネームカードホルダーのコストはただではない。返却されないとそれがそのまま〈e-SQU〉の余計な持ち出しとなる。とすれば、出口の目立つところに「ネームカードホルダーを必ず返却してください」といった張り紙を掲げるのはもちろん、イベントでは終了時に何度も「ネームカードホルダーの返却をお願いします!」というアナウンスを行うべきだろう。

写真:自分のネームカードホルダーの返却を忘れてしまった

 以上、参加者の視点で思ったことを率直に書いてみたのだが、前回の記事で指摘した「料金体系」の問題は今回、参加費を一律1,500円となったことで解決されており、同じく「イベント運営」の問題もきわめてスムーズな進行に変わった。上から目線で申し訳ないが、大きく進歩していると感じた。
 もっとも、前回の記事でそれらを偉そうに書いてしまったため、今回のイベントに参加するにあたって私もちょっと身構えていたのだ。だが、〈e-SQU〉関係者の方に会うと「いろいろと指摘してもらった方が我々としてもプラスになる」と言われ、むしろ私も大いに励まされたのである。
 早くも2回目のイベントが終わったわけだが、〈e-SQU〉の〈HS〉イベントは今後さらに熱を帯びたものとなっていくに違いない。次回も参加してレポートをお届けするつもりである。

3 件のコメント :

  1. すばらしいレポートありがとうございます。

    どうでもいいですが、このゲームは"Hearthstone"であって、2単語の"Hearth Stone"ではないかと存じます。

    返信削除
    返信
    1. ありがとうございます。略称と合わないので実は私も悩んでいたのですが、たしかに正式名称はHearthstoneですので、表記を変える一方、略称は(多少合わないのが気になりますが)HSのままでいきたいと思います。

      削除
  2. 自分もネームホルダー持ち帰ってました。帰ろうとしたら受け付けに誰もいなくて返却箱とかもなかったので。
    次のイベントの時にでも返そうと思ってます。

    返信削除